意外と知らない?いつも食べているパンの名前の由来とは
言葉というのは、思わぬ流れで誕生することもあるものです。
日ごろから使っていた言葉に、実は意外な由来があったという例は少なくないでしょう。例えば「大根役者」。大根役者とは一般に、芝居が下手な役者のことを指して使います。その由来については諸説ありますが、一説によると、大根が滅多に食あたりしないことから、「あたらない」と「売れない」をかけて、「売れない(であろう)役者」の意味で使われるようになったと言われています。
実はパンのなかにも、そんな変わった由来の名前を持つものがあります。
今回は、種類ごとにパンの名前の由来を紹介していきます。
パンの由来
種類ごとの名前の由来にいく前に、まずは「パン」そのものの由来について解説しましょう。
パンという名前は、ポルトガル語の「pão」に由来すると言われています。またpãoも、ラテン語で「醸造する」という意味を表す「panis」に由来しているとのこと。どうやら、外国語の響きをとってそのまま命名されたようですね。
パンが日本に伝わったのは15世紀半ば(戦国時代)と言われており、中国を介さずに日本へ伝わった言葉のなかで最も古いのが、パンであったとも言われています。
食パンの由来
パンのなかには、「カレーパン」「クリームパン」「ジャムパン」「あんパン」のように、「パン」の前についた言葉によって特徴が分かるものも少なくありません。
一方で「食パン」は、名前を聞いただけではどんなパンなのか分かりにくいですよね。では、食パンの「食」は何を表しているのでしょうか。食パンの由来は、諸説あると言われています。
本食パン説
第二次世界大戦より前に生まれたパン職人は、西洋料理の「もと」となる食べ物という意味をこめて、食パンのことを「本食パン」と呼んでいました。その証拠に、歴の長いパン職人のなかには、いまでも食パンのことを「本食」と呼ぶ人がいます。この「本食パン」が省略されて「食パン」になったという説があります。
主食パン説
日本におけるパンの歴史のなかで、最初に広まったのは食パンではなく「菓子パン」でした。そこで、後から出てきた菓子パンではないパン、つまり甘くないパンは、主食になるパンとして「主食パン」と呼ばれることもあったそう。その主食パンが省略されて「食パン」になったのではないかとも言われています。
「パン」のつくものと区別するため説
パンは、紙を傷つけずに消せる道具として美術のデッサンでも重宝され、「消しパン」と呼ばれていました。また当時、「フライパン」も世に存在していたことから、食べられないパンと食べられるパンを区別するために、「食パン」と呼ばれるようになったという説もあります。
クロワッサンの由来
「クロワッサン」という名前は、パンの形に由来しています。
クロワッサンはフランス語で「三日月」という意味。17世紀、トルコのオスマン帝国がウィーンに侵攻した際、それを退けたウィーン守備隊の勝利を祝う目的で、敵方オスマン帝国の象徴だった三日月を象って作ったパンが、クロワッサンの原型「キプフェルン」だと言われています。
いまでは、三日月型じゃないクロワッサンも増えていますね。
メロンパンの由来
「メロンパン」の由来といえば、どういうものを思い浮かべますか?「格子状の模様がメロンに似ているから」という由来を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実は、メロンパンの「メロン」がメロンの模様からきているものではないという説もあるのです。メロンパンの由来には、これまで2つの説が唱えられてきました。
模様がマスクメロンに似ているから説
これは多くの人が最初に思い浮かべる説でしょう。一方でその内容は二分されていて、「意図的にメロンに似せて模様をつけた」という説と「ひび割れたことで偶然メロンのような模様になった」という説が存在しています。
「メレンゲパン」が変化した説
メロンパンは、パン生地にビスケット生地をかぶせて作るパンとして誕生しました。誕生した当時、ビスケット生地にメレンゲが入っていることから「メレンゲパン」と呼ばれることもあったとのこと。このメレンゲパンがしだいに訛って、メロンパンになっていったとも言われています
ベーコンエピの由来
「ベーコンエピ」は、その歯応えの良さと香ばしさ、ベーコンの塩気の絶妙さから、多くの人気を集めているパンです。しかしファンのなかにも、この「エピ」の部分に疑問を持っている人も少なくないでしょう。
「エピ」とは、フランス語で「麦の穂」を表しています。ベーコンが入っていて、パンの見た目が麦の穂に似ていることから、「ベーコンエピ」という名前になったとのことです。
サンドイッチの由来
「サンドイッチ」という名前のパンが誕生したのは、18世紀のイギリスです。
当時の伯爵「ジョン・モンタギュー」が、ゲームをしながらでも片手で食べられる料理を要望し、そこで生み出されたのがサンドイッチだと言われています。サンドイッチという名前は、ジョン・モンタギューの役職「サンドイッチ伯爵」に由来しているとのことです。
由来を知ってパンの歴史に思いを馳せる
生まれる前から存在していたものの名前は、「そういうものだから」で片付けてしまいがちです。当たり前だと思っていれば、疑問に思うことも少ないでしょう。
名前の由来を知ることで、いまに生きる私たちもその歴史を追体験できます。由来が当時に誘ってくれると言っても過言ではありません。
パンは私たちにとって、日常生活で関わることの多い身近な存在です。
名前の由来を知って新しい角度で思いを馳せることは、あなたとパンの生活をいっそう濃いものにしてくれるに違いありません。