頑張り過ぎている方に!滋養系のオススメ漢方薬ベスト5

最近なんだか体の調子がすぐれない、寝ても疲れがとれない、以前よりも食が細くなった気がする、あるいは逆に以前よりも食べているはずなのにすぐにお腹が空いてしまう、ということはありませんか?

以前と比べてなにかしらの変化を感じるとき、それは体がサインを出しているときかもしれません。「未病」という言葉が浸透しつつありますが、病院で診察してもらうには至らないものの、確実に体が弱っているのを感じるということであれば、体ががんばりすぎて本来のキャパシティーを超えようとしている状態にある可能性があります。

体は実に正直です。仕事や家事、育児など生活のさまざまなことに追われ、忙しく過ごしているとつい見逃してしまうこともありますが、そのままがんばりすぎているといずれ本当に「発病」という形で体が悲鳴を上げてしまうこともあります。

まずは漢方を生活のサイクルの中に取り入れて、少しずつ体を労わってあげましょう。今回は、普段がんばりすぎている方におすすめの漢方を5種類紹介します。

滋養系のオススメ漢方薬ベスト5

1.半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

日々のことに追われて忙しくしていると、胃腸に不調を感じることがあります。こちらはみぞおちのつかえ感や吐き気、食欲不振、消化不良、神経性胃炎、下痢、軟便などのときに広く用いられる漢方薬です。

名前にある「瀉心(しゃしん)」とは、みぞおちのつかえを取ることを指し、また、同時に精神神経活動と循環活動を担うとされる漢方における「心」の働きを表す「心気(しんき)」の滞りを除くという意味もあるとされ、そのため仕事や家事でストレスを感じている方にもよく勧められています。

忙しいときは決まって神経性胃炎になってしまう、あるいはお腹を下してしまうという方も少なくないですが、少しでも変化を感じたら、まず半夏瀉心湯を試してみてもよいかもしれません。

なお、胃腸にトラブルを抱えていると必ず食欲不振になるというわけではありません。場合によっては逆に必要以上に空腹状態が続いてしまうということもあります。「食欲があるから大丈夫」と思わずに、普段と比べてなにかしらの変化があれば体が異常を訴えている可能性がある、と思うようにしてください。

2.呉茱萸湯(ゴシュユトウ)

疲れているときに頭痛を感じる方も少なくありません。たとえばデスクワークの場合、長時間同じ姿勢でPCに触れているため、血のめぐりが悪くなって頭が重く感じたり、眼精疲労から頭痛に発展してしまったり、慢性的に片頭痛に悩まされている方もいるでしょう。

こちらは、繰り返し起こる頭痛、なかでも片頭痛に有効とされている漢方薬です。服用には手足が冷えやすく、体力が中程度以下の方に向いています。片頭痛は発作性でズキンズキンと痛むのが特徴ですが、時に激痛になり吐き気を伴うこともしばしばあり、そんなときに特に用いられています。

また、緊張型頭痛と呼ばれる、首の後ろや肩のこりとともに起こる頭痛の際にも勧められているので、日ごろから頭痛に悩まされている方の多くのケースを網羅することができるかもしれません。

病院で処方されるような鎮痛剤によって副作用が出たことがあるという方にも漢方薬はお試しいただけます。なので、呉茱萸湯はやや苦みが強いことで知られるものではありますが、「良薬は口に苦し」と感じられるかもしれませんよ。

3.柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

がんばりすぎているときは常に体が緊張状態にあり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、なんでもないことにもついイライラしてしまうことがあります。そんな方におすすめできるのがこちらです。

東洋医学では「気血水(きけっすい)」の3つの要素が体内にバランスよく巡っている状態を健康ととらえ、いずれかが過不足したり、滞ったりした際に不調となってあらわれると考えられています。なお、気は「気合」といった言葉にあるとおり、精神的、あるいは神経的な分野を指し、血(けつ)はそのまま血液循環や心、肝などを指し、水(すい)はあらゆる体液、水分代謝の分野を指すとされています。

イライラは気、または血の中の肝に異常がある状態だと捉えられており、柴胡加竜骨牡蛎湯が用いられるのは、その中でも「気うつ」のときです。「健全な精神は健全な肉体に宿る」といわれますが、些細なことでイライラした経験がある方なら、だれしもそれを実感したことがあるのではないでしょうか。

怒りっぽいのは性格によるものに限らないということです。「こんなことでイライラしてしまった」と自己嫌悪するのではなく、まずは体をリラックスさせて落ち着くことで、本来のあなたの心理状態に戻るかもしれませんよ。

4.当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

当帰芍薬散は、主に前項で触れた「気血水」でいうところの血の不足を補い、体を温める「駆瘀血剤(くおけつざい)」だといわれています。そのため、貧血や月経不順、月経異常、月経痛などで悩まされている方によく用いられます。

働き方や生活様式が多様化し、「キャリアウーマン」や「主婦」という言葉はもはや死語になりました。性別を問わず社会に出て働き、あるいは家のことを守り、それはだれかに決められるのではなく、自分で選択できることが常識だと考えられるようになったので、ひとりひとりが無理をせずに個性を伸ばせる環境が広がってきているのです。

とはいえ、まだその変化についていけていない職場や家庭環境も多くあります。無理を強いられる環境では毎月のサイクルが乱れてしまうこともあるでしょう。この漢方薬はそんな、ついがんばりすぎてしまう、がんばることを求められている女性に向いているといえるかもしれません。

もちろん男性に有効でないわけではありません。婦人科系のお悩み以外にも、めまい、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷えなどの改善も期待できるといわれているので、思い当たる方は試してみてもよいでしょう。

5.川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)

「体調管理も仕事の内」と考える方もいますが、忙しいときはそう言っていられないことも多いでしょう。眠る時間も惜しんで仕事や家事、育児に明け暮れている場合は免疫力も落ちてしまいがちですし、ずっと気が張っている状態だと風邪をひいてしまっても気づかないということもありえます。

こちらは頭痛の中でも風邪やインフルエンザなどによって引き起こされたものに適しているといわれています。鎮痛作用のほかに血行をよくするとされる生薬も配合されているので、月経時の諸症状にも効果が期待できそうです。

ただし、漢方薬はこの川芎茶調散に限らず、即効性があるわけではありません。また、必ずしも全員に効果があるとも限りません。そのため、風邪やインフルエンザなどの兆候が感じられたら、漢方薬に頼るだけではなく、無理せずきちんと休みをとって心身ともに落ち着かせることが大事です。

なかなかそれがかなわない環境もあるかと思いますが、何事も一人で抱え込まずにたまには周りの人を頼ってみてもいいかもしれませんよ。

漢方薬は長く付き合っていくもの

片頭痛や肩こり、目眩、月経時の諸症状など、慢性的なものの場合、多少の痛みや異変は気にせずに通常どおりの生活を続けてしまうという方も少なくないでしょう。そんなときに用いられるのが漢方薬です。

漢方薬は即効性があるものではないと先述しましたが、「不調を感じる部分をピンポイントに科学的に治療する」ことを目的とした西洋医学とは異なり、「自然科学に基づいて不調を感じる部分を含め心身全体のバランスを整えて改善に導く」ものです。

つまり、不調や異常を感じる部分が明確にあっても、そこだけを治療するということができないので、長い期間をかけて体を正常な状態に戻すようサポートしていく必要があります。ただしその分、副作用がないため、体への負担も軽いです。

未病とは、日々の疲労やストレスが蓄積され、完全な不調となってあらわれる一歩手前の状態とも考えることができます。つまり、発病する前にケアすることができたら、より自然体のまま健康を保てるということです。

じっくり時間をかけて行うということが苦手なせっかちな方も、自分の心身状態と今一度向き合って、必要に応じて漢方薬を取り入れ、新たなライフスタイルを歩むことができたら、その柔軟性こそが自らを守ってくれる糧になるかもしれません。

「東洋医学」や「未病」、「自然科学」と、普段使わない言葉が続きましたが、難しく捉えずにまずは踏み出してみてはいかがでしょうか。