不動産相続
生前対策
配偶者の税率軽減を活用
配偶者への相続においては、大きな控除枠が設定されています。二次相続とのバランスを考え、ケースに合わせて活用しましょう。
CASE STUDY 実際の事例
K様は80歳を過ぎた頃から相続対策について考えようとしていましたが、急病により十分な準備ができないままお亡くなりになられました。
残された財産は2億円近く、相続人となったK様の奥様と息子様から至急のご依頼をいただきました。
2億円のうち1億5,000万円相当が不動産(自宅)であり、「自宅を残したまま余裕をもって税金を払えるか」ということをお二人とも心配されておりました。
SOLUTION 当事務所による解決
二次相続のことを考えれば、奥様が今後必要なだけの資金を確保し、それ以外はお子様が相続する、という形が一般的には望ましいとされます。しかし今回は遺産の大部分を不動産が占めており、奥様の心情として「すぐに売却」という選択肢は考えられません。
そのため当事務所は「まず今回の相続税を抑える」ということを優先し、控除枠を目一杯活用する形をご提案しました。配偶者は1億6,000万円、子ども1人につき3,600万円の控除枠を使うことで、さしあたり相続税をほとんど支払わずに手続きを終えました。
これを期に奥様の相続対策も当事務所にご依頼いただき、時間をとって今後のプランを作成いたしました。
「自宅を売却して高齢者向けマンションなどへの入居費用に充てる」「自宅をアパートとして建て直し、一室に大家として住まう」などの選択肢もありましたが、最終的には奥様とお子様が同居する形をお選びになりました。
長年過ごした家に対する思いがお互いに強かったこと、また二次相続の際に小規模宅地の特例適用が見込めることが大きな決め手となりました。
POINT 気をつけたいポイント
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配偶者の税額軽減は、「1億6,000万円」と「法定相続分」のいずれか高いほうが対象となります。遺産総額が2億円であれば、配偶者の法定相続分は1億円ですから、高いほうの「1億6,000万円」までが非課税となります。
遺産総額が4億円となる場合には、法定相続分は「2億円」ですので、より高い「2億円」までが非課税となります。 -
一見便利な配偶者控除ですが、二次相続まで考えるとかえって税負担が大きくなるケースもあります。
相続税は額によって税率が変わり、ご夫婦の財産が合算されることで税率が高まるおそれがあるのです。このケースでは「K様の遺産」と、「K様の財産とは別に、奥様がもともと所有していた財産」が、二次相続における課税の対象となるため、その都度お子様が相続する場合よりも税率が上がるリスクがあるのです。 -
今回は奥様とお子様が同居される形になりましたので、二次相続において小規模宅地の特例の対象となると考えられます。