介護が必要な高齢者にとって、食事の時間は楽しみにも苦痛にもなりかねます。介助の仕方がよくなければ、せっかくの好物もそう感じられなくなってしまう可能性があるということです。
高齢者の食事をサポートするには、誤嚥や窒息などの事故が起きないように気をつけるだけでなく、「おいしい」「楽しい」と感じてもらうことが大切。そう感じることができれば、自発的に食べようという意欲も沸くかもしれません。
当記事では、これから介護を行う人に向けて、食事介助が必要な理由やその方法について解説いたします。
高齢者に食事介助が必要になる理由
それでは、まず高齢者に食事介助が必要になる理由についてお話しいたします。
身体的機能の低下
基本的に、高齢になればなるほど、身体的機能は衰えていくと考えられます。視力の低下により、食べ物がどこにあるのか、またそれがなんの食材なのかわからなくなったり、筋力の低下により、箸やスプーンが上手に持てなくなったりするでしょう。このように、ひとりで食事をすることが困難になったとき、食事介助が必要になります。
嚥下・咀嚼機能の低下
高齢になると、嚥下力(食べ物を飲み込む力)や咀嚼力(食べ物を噛む力)もだんだん低下していきます。そうすると、誤嚥のリスクが高まるだけでなく、積極的に自分から食事をしようという意欲が薄れていき、食欲がなくなったり、栄養をきちんと摂取できなくなってしまったりすることも考えられます。
認知機能の低下
認知機能が低下すると、味覚や空腹感といった感覚が薄れてくると考えられます。また、食べ物を食べ物と認識できなくなることもあるでしょう。これにより、一人ではきちんと栄養のある食事を取るという習慣がなくなってしまう可能性があります。
高齢者の食事に関する傾向
それでは、高齢者にはどういった食事が適しているのでしょうか。傾向から考えていきましょう。
硬い食べ物は飲みこみづらい
咀嚼機能が低下していたり、入れ歯を使っていたりする人もいるため、噛む力を必要とする硬い食べ物はあまりおすすめできません。嚥下力が低下すると、噛む力だけでなく、飲みこむ力もあまり必要としないやわらかいものをより好むようになるでしょう。
乾燥した食べ物も飲みこみづらい
加齢とともに嚥下力が低下するだけでなく、唾液の分泌量も減少していく傾向にあるので、パンやクッキー、サツマイモ、ジャガイモといった、飲みこむ際に水分を要する食べ物も得意ではありません。水気を多くふくんでいたり、とろみがあったりする食材を選ぶようにするとよいでしょう。
喉が渇きにくくなる
食事の際には水分が必須ですが、高齢になると喉の渇きを認識しにくくなることがあります。本人が飲みたい分を飲むだけでは、必要量を摂取することができないかもしれません。こまめに水分補給を促し、都度どの程度飲んだのか確認することが重要です。
薄い味つけでは物足りなくなる
認知機能の低下は、味覚や嗅覚にも影響を与えます。食事においては、料理の味や匂いを感じにくくなることにつながります。本人が求めるまま調味料を増やしてしまうと、塩分過多になってしまう可能性もあるので注意しましょう。
消化機能の低下
胃粘膜の分泌量が減少し、腸の運動も活発ではなくなることで、消化機能も低下してくるでしょう。そうすると胃もたれや便秘などを起こしやすくなり、食欲不振につながることもあります。胃腸にやさしく、きちんと栄養をとれるものを選ぶようにしましょう。
食事介助の方法
それでは食事介助の方法を解説します。身体状況や性格などによって異なるので、あくまで基本的な手順として参考にしてみてください。実際に行う際は、被介護者の身体能力やその日のコンディションに合わせて臨機応変に対応することが大事です。
1. 口腔内をチェックする
まずは義歯を使用されている方はきちんと装着できているかどうか確認しましょう。
そのうえで、うがいや歯磨きなど、食事前に口内を清潔にします。これは口の中に細菌がある状態での誤嚥によるリスクを防ぐためです。また、舌苔を取り除くことで味覚が敏感になり、食事を楽しみやすくなります。
そのうえで、うがいや歯磨きなど、食事前に口内を清潔にします。これは口の中に細菌がある状態での誤嚥によるリスクを防ぐためです。また、舌苔を取り除くことで味覚が敏感になり、食事を楽しみやすくなります。
2. 安全な体勢を確保し、介護用エプロンをかける
安全な体勢を取ることで、誤嚥リスクを防ぎます。自力で座位(座った姿勢)を保てる人であれば、椅子や車いすに深く腰掛けた状態で足が床につき、なおかつ膝が90度に曲がるくらいの位置がベストだといわれています。
リクライニング車いすやベッドで食事をする場合は、高齢者の身体状況や本人の希望に合わせながら、だいたい45度~80度くらいに保つのがよいといわれています。人それぞれ食べやすい角度は異なるので、一人ひとり様子をよく見ながら体勢を整えましょう。また、食べこぼしで衣服が汚れることがあるので、介護用エプロンもあると便利です。
リクライニング車いすやベッドで食事をする場合は、高齢者の身体状況や本人の希望に合わせながら、だいたい45度~80度くらいに保つのがよいといわれています。人それぞれ食べやすい角度は異なるので、一人ひとり様子をよく見ながら体勢を整えましょう。また、食べこぼしで衣服が汚れることがあるので、介護用エプロンもあると便利です。
3. 介護者は隣に座る
介護者は必ず被介護者の隣に座るようにしましょう。同じ目線で介助することで、きちんと飲みこめたか、あるいは誤嚥していないか確認しやすくなります。
4. 最初に水分補給
食事の前に水分を補給して口内を潤しておくことで、嚥下をスムーズにします。
5. 水分の多いものから口に運ぶ
食事の順番は汁物など水分の多いものが先。高齢者にとって、乾燥した食べ物よりも摂取しやすいため、ウォーミングアップにもなります。
6. バランスよく食事をする
バランスよく、主食、副食、水分を交互に食べてもらうようにしましょう。このとき、一口の量はティースプーン1杯分程度が適切といわれています。つかえてしまわないよう、スプーンを奥まで入れすぎてしまわないように注意しましょう。
7. 飲みこんだか確認してから次の食事を運ぶ
きちんと噛んで飲みこんだかどうかを確認してから次の一口を運ばないと、焦って誤嚥してしまったり、喉に詰まらせてしまったりすることがあります。あくまで高齢者のペースに合わせることが大事です。
8. 食事後に摂取量を確認
食事が終わったら、どのくらい食べられたか確認してから片づけるようにしましょう。極端に前日、あるいは前回の食事と量が変化していたら、体調に問題のある可能性があります。一人ひとり普段の量を把握しておくとよいでしょう。
9. 口腔ケアをする
食後は歯磨きをして口の中を清潔に保つことが大事です。そうすることで虫歯を防ぐだけでなく、いつでも休める状態になれます。ただし、食後すぐに横になると食べたものが逆流してしまうことがあるため、ある程度時間を置くようにしましょう。
食事介助の重要性
食事は毎日行うものなので、食事介助をしていると、その人の様子の変化がわかるようになったり、健康を把握できるようになったりします。
コミュニケーションを取るチャンスでもあるので、相手の様子を見ながら積極的に声かけを行い、食事を楽しんで自発的に「食べたい」と思ってもらえるよう工夫するようにしましょう。
コミュニケーションを取るチャンスでもあるので、相手の様子を見ながら積極的に声かけを行い、食事を楽しんで自発的に「食べたい」と思ってもらえるよう工夫するようにしましょう。